紐おじさん
それは、ミラノでのこと。
市街地を散策していると黒人の男性がニコニコしながらこちらへ歩いてきた。
「やぁ!俺の友達じゃないかー。」
手には何か持っている。
あやしい。
ミラノの名物はイタリアンに次いでスリ。人は信用しちゃあいけない。無視無視・・・しようとしていたのだが、一緒に歩いていた友人が彼の相手をしてしまう。
「ノー!ノー!」
振り返ると、足を止めノー!ノー!言っていた。
しばらく見ていると、何かした後、二人揃って、こちらへ来る。
いや、いらないんですけども・・・・
男性は手にカラフルな紐を持っていた。
「なんか、無料なんだってさ。」
友人は、手を隠す僕に言った。
「ミサンガみたいなものじゃない?」
うーん・・・まぁいいか。友人には何も無かった訳だし、と腕を出してしまう。
「セネガル(?)からの紐ネー・・・」
男性はニコニコしながら、手にその紐を付けるとニッパーの用なもので残った紐を切った。
「20€」
さっきまでニコニコしていた男性は突然顔色を変える。
「いや、さっきまで無料って・・・」
友人は焦っているようだった。
「二人で20€」
男性はそれしか言わない。
「高すぎる!」
友人は抗議する。
「じゃぁ、二人で10€早く払え。」
あー、これどっかで見た事あるような・・・・。
そんなことを考えていると、友人はもう財布を出していた。
「お金がない。」
財布から、12セント(15円くらい)を出すと財布の小銭入れをひっくり返して、振ってみせた。
すると、男性は、何も言わず、12セントだけもってどこかへ行ってしまった。
とまぁ、観光地名物に遭遇。でも、実際に会うのは初めてでした。
気を付けろとは、日本にいるときから常々いわれていたんですがね・・・。
まぁでも今回は友人のファインプレーもあり、12セントで済みました。とはいえ、腕に着いた紐は、なんか気分が悪かったのですぐに外しました。
手いじりして、指に巻き付けたまま、夕方、別の友人に会うと、
「なんで中指に何か付けてるの?」
とか言われるし。その後散々でした。
ろくな事は無いです。海外の観光地に行く際は気をつけましょう。
ちなみに、次の日、別の観光地へ1人で行きました。
お城だったんですが、お城の手前の広場に紐を片手に持つ「紐おじさん」が10人くらいいて狭い広場なのに、全員から、いちいち
「やぁ、友達!!セネガルのー・・・」
と言われまくりました。ろくに観光も出来ません。
大きなリュックを背負っている観光者の日本人。絡まれる事は読めていたので、別の観光客の影に隠れて歩くとかしていたんですが、彼らを避けてわざわざ、僕の方へ言ってくる始末。
しまいには、肩に一本その紐を勝手にかけて、
「紐が肩にあるぞ!」
とか言ってくる。面倒くさい。
そんなときは、無言でその場に紐を捨てる(←大事)。絶対、相手にしちゃいけません。
ご注意を。
ニコニコしている初対面の人に対して辛く当たるのは、心が痛みますが、そこは鬼にしましょう。彼らも必死・・・。
何度断っても、同じ場で何度も絡まれるのに、かなり不快だったわけなんですが、その広場は、トリエンナーレというデザインの会場付近だったということもあり少し考えた。
彼らは、紐をぼったくりの価格で売っている。「フリーフリー」と連呼しているので、当然詐欺であるのだが、「セネガルのおまじない」が何とかとも言っていた。
その場の状況や、消費者へ与える経験をもっと加味すれば、20€でいいのではないかと思わせる事は実際可能。僕は、それがデザインだと思っている。
たかが紐に20€の価値はない。それは誰しもが知っている事だが、そこに付加価値をつけることで20€で買ってもらう。やっていることは、紐おじさんと変わらない詐欺(物質的に見れば)。
やり方は、やや強制的で不愉快だけど、商法は大きな目で見て同じ。
デザインって言葉の上では綺麗だけど、やっている事は全く違うとも言いがたい。このままで良いのかなって少し考えてしまいますね。
胸を張って違う!といいきれる事をしていけるといいですね。